本研究課題では、CD200R3陽性内在性制御性樹状細胞の生体内での動態とCD200R3を介した免疫寛容誘導機構を明らかにする。このため、CD200R3陽性内在性制御性樹状細胞を特異的に欠損する遺伝子改変マウスとして、CD200R3の機能を担うexon 2、exon 3、exon 4をIRES2-ジフテリア毒素(DT)受容体遺伝子(DTR)-EGFP-Cre/Neo Cassetteで置換したCd200r3.null-DTR-EGFP knock-in(KI)マウス(以下、CD200R3-KIマウス)を作製した。CD200R3-KIマウスではCD200R3陽性内在性制御性樹状細胞でCD200R3機能ドメインに代わりDTR-EGFPが発現することからCD200R3は不活性化する。さらに、DTの投与でCD200R3陽性内在性制御性樹状細胞が消失する。すなわち、CD200R3-KIマウスを用いて生体内でのCD200R3の機能を明らかにするとともにCD200R3陽性内在性制御性樹状細胞の免疫応答制御における役割を解明する。 研究成果では以下の結果が得られた。すなわち、CD200R3が不活性化した内在性性制御性樹状細ではT細胞機能制御能が著しく低下した。また、野生型(WT)マウスと比較してCD200R3-KIマウスではToll-like receptor (TLR)リガンド投与での血清サイトカイン産生の亢進、抗原特異的T細胞免疫応答の増強が認められた。さらに、免疫病態モデルにおいてCD200R3-KIマウスではWTマウスと比較して免疫病態が増悪し、抗原特異的T細胞免疫応答の増強が認められた。 以上の結果から、内在性制御性樹状細胞は免疫応答において生理学的な制御細胞として作用し、その機能についてCD200R3を介する制御機構の分子基盤が初めて証明された。
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