研究概要 |
樹状細胞サブセットにおける遺伝子発現を比較した結果、膜タンパク質のSiglecHがpDC優位に発現している事が明らかとなった。pDC特異的な遺伝子改変マウスを作るため、SiglecH遺伝子座に、蛍光タンパク質(Kikume Green-Red,KikGR)を挿入する方法で、ノックインマウスを作成した。このマウスのpDCは、すべてKikGRを発現していた。しかしながら、通常樹状細胞の一部にもKikGRの発現が認められた。それ故、このマウスではpDCのみにKikGR標識を行う事が、不可能である事が明らかとなった。 pDC特異的遺伝子欠損システムを作成するために、SiglecH遺伝子座にcreレコンビナーゼ遺伝子を挿入したノックインマウスを作成し、cre発現の特異性を解析した。Rosa-LoxP-STOP-LoxP-tdRFPノックインマウス(creを発現する細胞のみが、赤色蛍光タンパク質を発現する)と交配し、仔マウスについて解析を行った結果、pDC特異的な赤色蛍光タンパク質発現は、観察されなかった。個体発生あるいは樹状細胞の発生分化過程において、cre発現が誘導されると考えられた。対策として、SiglecH遺伝子座にタモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼ遺伝子を挿入した遺伝子改変マウスを作成している。特異性の確認のために、上記と同じ交配を行い、タモキシフェン投与に依存したpDCの赤色蛍光タンパク質発現について検討を計画している。 SiglecHホモ変異マウスのpDCは、野生型と同様に発生・分化した。ホモ変異マウスの脾臓pDCは、ex vivoでCpG DNA刺激によるI型IFN産生が亢進していたが、炎症性サイトカイン産生は野生型と変わらなかった。一方、1本鎖RNA刺激によるI型IFN産生と炎症性サイトカイン産生は、野生型と同様に見られた。詳細について解析中である。
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