研究課題
本年度は以下の研究成果を挙げた。1、UNG (Uracil DNA glycosylase)とPOLH (DNA polymerase η)の二重欠損マウスにおける体細胞変異について解析した結果、UNGとPOLHが異なるU:G損傷をターゲットとすることを明らかにした。抗体遺伝子の体細胞変異は、AIDとよばれる酵素によって誘発される。AIDはシトシン(C)をウラシル(U)に変換し、ゲノム上にU:G損傷を誘導する。UNGはUを除去し、その結果生じる脱塩基部位が複製される過程で、C:G塩基対にtransversion変異が導入されると考えられている。一方、U:G損傷がミスマッチとしても認識され、その“修復”過程で、損傷のないA:T塩基対にも高頻度の変異が誘発される。これまでの解析から、A:T変異の誘発には、複製エラーを起こしやすいPOLHが必須であることが示された。本研究により、UNGとPOLHはそれぞれ細胞周期のG1期とS期に誘発されるU:G損傷をターゲットとし、C:G transversionとA:T変異を誘発することが示唆された。2、A:T変異に見られるstrand-bias はAIDの発現量が高い時にのみ誘発されることを示した。A:T変異は、upper strandでは、Aにおける変異がTにおける変異の約2倍も多く、その原因は長年不明のままであった。本研究では、strand-biasのメカニズムを解明するためのin vitro実験系の樹立に成功した。初歩的な解析結果から、AIDの発現量が高く、upper strandとlower strandに多くのU:G損傷が誘発された場合、upper strandのUがより効率よくミスマッチ修復系に認識されることが示唆された。これらの研究成果は、C:GとA:T塩基対における変異誘発機構の更なる解明に重要な知見を提供した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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