研究課題
自己免疫疾患、生活習慣病に共通した疾患関連遺伝子として注目される細胞内アダプター蛋白質Sh2b3/Lnkについて、機能異常の標的となる細胞や細胞間相互作用の解明を目指した。改良型GFPであるVenusをLnk/Sh2b3遺伝子座にノックインし、Lnk/Sh2b3発現をモニターできるレポーターマウスを樹立した。成熟T細胞や樹状細胞においてもLnk/Sh2b3発現が確認された。Lnk欠損マウスではCD44+CD8+T細胞が増加すること、この増加がCD8+T細胞のIL-15反応性亢進に因ることを見出した。野生型マウスにCD8+T細胞を移入しても恒常性維持増殖が誘導されない環境のため増殖しないが、Lnk欠損CD8+T細胞を移入すると数週のうちに増殖した。IL-15欠損マウスに移入した場合この増殖はみられずIL-15依存性であった。一方、Lnk欠損マウスの回腸で絨毛萎縮が自然発症することを見出した。絨毛萎縮はLnk欠損CD44+CD8+T細胞を野生型CD4+T細胞とともにリンパ球欠損マウスに移入することで再現され、CD8+T細胞におけるLnk欠損が主な要因となることがわかった。Lnk機能障害が、CD44+CD8+T細胞のIL-15反応性亢進による増幅から腸管障害を起こすこと、セリアック病の病態形成に繋がる可能性を初めて明らかにした。Lnk欠損では樹状細胞も増加し、前駆細胞のGM-CSFやFlt-3Lへの反応性亢進が原因であることがわかった。成熟樹状細胞のIL-15感受性も亢進しており、炎症応答への影響が考えられた。骨髄増殖性疾患でもLNK/SH2B3遺伝子の欠損や変異例が見つかっている。Lnk欠損造血幹細胞ではTPO反応性亢進によりBcl-xL発現が亢進すること、放射線等アポトーシス誘導刺激に対し抵抗性が増大することを明らかにした。セカンドヒットによる遺伝子異常の蓄積確率を上昇させる発症機構が考えられる。
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