1)経鼻免疫におけるB-1細胞の関与:自然抗体産生細胞であるB-1細胞を欠損するBtkノックアウトマウスにインフルエンザワクチンをpoly(I : C)とともに経鼻接種したところ、鼻腔への抗原特異的IgA分泌が野生型と比べて有意に低かった。この現象がB-1細胞の欠損によるものか確かめるために野生型マウスのB-1前駆細胞を移植し、B-1細胞を再構築したところ、ワクチン反応が部分的に回復した。これによりB-1細胞が経鼻ワクチンに対する液性免疫応答に関与することが明らかとなった。一方、インフルエンザワクチンを経鼻接種したBtkノックアウトマウスの脾細胞を抗原で再刺激すると野生型マウスと同等のインターフェロンγ産生T細胞が観察されたことから、B-1細胞は経鼻ワクチンに対する細胞性免疫には不要であることが示唆された。 2)マウスの鼻組織B細胞にはCD23陽性のB-2様表現型を示す細胞とCD23陰性のB-1様表現型を示すB細胞が観察されるが、後者はBtkノックアウトマウスにも存在した。また、BtkノックアウトマウスにCD45.1アロタイプの異なるB-1前駆細胞を移植するとドナー由来のB-1細胞が腹腔内に観察されたが、鼻組織には見られなかったことから、鼻組織B細胞はCD23の発現の有無にかかわらず、B-2細胞であることが推測された。さらに経鼻ワクチン接種後の鼻粘膜IgAは自然抗体に特有なホスファチジルコリンに対する結合能が見られないことからB-2細胞由来の獲得免疫抗体であると推測された。 3)上記の結果より経鼻ワクチン反応においてB-1細胞はそれ自身が特異抗体産生に関わるのではなく、B-2細胞による特異抗体産生をB-1細胞あるいはそれが産生する自然抗体が誘導することが考えられた。
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