研究課題
本研究の目的は、乳癌医療に対する個人の選好を実証的に明らかにすることである。具体的には、乳癌ハイリスク者化学予防内服の需要モデルをミクロ計量経済学的に推定することと、乳癌の病期に応じた患者の健康水準の効用値を選好に基づく尺度であるEQ-5Dを用いて測定することである。本年度は、後者の実証データの取得に力を注いだ。ただし、これに関しては、本邦から臨床試験に併行したデータ収集に基づいた術後化学療法の病期についての報告(Shiroiwa et al. Value in Health 2011 ; 14(5) : 746-51)がなされた。そこで本研究では本邦で未検討の、乳癌術後患者の健康状態に対する健常者個人の選好を調査した。対象となる健康状態は、乳房温存術/乳房切断術、リンパ節郭清術の有無、ホルモン療法の有無の3つの観点からの分類の組み合わせの8種類である。調査手法としては、健常者の選好を直接尋ねることを試みるため、EQ-5Dの使用を回避して時間得失法を選択した。また、乳癌術後の健康状態を一般の健常者に尋ねることは、精神的な負担が高いことを考慮して、一般人口集団からの標本抽出を回避して、インターネット調査会社に契約しているモニターから標本抽出を行って、ウェブ調査として実施した。結果成人女性275標本からのデータの収集を平成23年度末までに完了した。このデータを解析することによって、原発性乳癌の代表的な術後の健康状態に対する社会的な選好が明らかにされ、乳癌医療の根拠に基づいた効率化に資する経済評価研究に広く応用されることが期待される。
3: やや遅れている
乳癌ハイリスク者化学予防内服の需要モデルをミクロ計量経済学的に推定することが進んでいない。
今後の推進方策としては、学術論文として目に見える形での成果を最終年度(平成24年度)末までに挙げることを優先として、今年度に収集したデータを解析して論文化する。乳癌ハイリスク者化学予防内服の需要モデルをミクロ計量経済学的に推定については、年度末までに成果としてまとめることは時間的に難しい状況にある。優先した論文化と並行してデータ収集の完了を目指す。
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Breast Cancer Research and Treatment
10.1007/s10549-012-1979-7
巻: 127 ページ: 739-749
10.1007/s10549-010-1243-y