世界的に類稀な発展を遂げた日本の生体肝移植は、退院後のドナーのフォロー・アップを視野に新たな局面を迎えつつある。だが、そうした体制を充実させるためにはまず、入院から退院、そして通常の生活へ戻っていくまでのドナーの心理・社会的ニーズの詳細について明らかすることが必要である。しかし、ドナーの心理・社会的側面に関する研究は極めて先例が少ない。そこで、本研究では主にインタビュー調査手法を用いて、生体肝移植ドナーの1)入院から退院に至る心理状態の変化(特に術後)と、2)退院後の心理状態やニーズの変化を明らかにし、3)上記調査の結果に基づきドナーのフォロー・アップ体制について検討・考察することを目的とする。 今年度は、生体肝移植ドナーの術前・術後、退院後の心理状態に関する文献レビューを実施し、わが国における生体肝移植ドナーの(1)入院から退院に至るまでの心理状態の変化(特に術後)と(2)退院後の心理状態やニーズの変化について、国内外の研究報告を網羅的にレビューした。 その結果、当該テーマの関連領域として近年注目されていることが判明した「渡航医療(移植を含む)」「再生医療(特に幹細胞治療)」の問題についても資料・情報収集と文献レビューを行った。
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