乳がん患者における手術待機期間の違いを把握し、その説明要因(施設要因および個人要因)を明らかにすることを目的に、本年度は調査票の作成、調査対象への打診、および一施設におけるパイロット調査を行った。 本研究の計画当初では、任意に抽出した10施設において乳がん手術後患者をそれぞれ20名ずつインタビュー調査を行う予定であったが、打診を行った医療施設のうち、7施設が患者プライバシー保護や患者心理への影響の観点から派遣インタビュアによる調査を拒んだため、調査法の再検討を行うこととした。 再検討に当たり、考慮したのは、患者の回答負担を極力抑えることと医療施設スタッフの負担にならないという点である。そこで、ノートパソコン上にホームページ作成ソフトを用いてWebページ形式の質問票を作成した。 このノートパソコンを用いた調査票を評価するために、協力の得られた-施設において乳腺疾患の患者24名を対象にノートパソコン調査による回答と施設スタッフによるカルテ調査および患者への聞き取り調査による回答を比較することで、ノートパソコン調査票の妥当性評価を行った。 手術入院前の外来初診日から手術日までの期間を手術待機期間とし、さらに入院前と入院後の期間にわけた。それぞれについて患者のノートパソコンによる自己回答とカルテ情報との比較を行ったところ、入院後の待機期間については一致しSpearman相関係数も1.00であったが、入院前の待機期間についてはSpearman相関係数は0.62と自己回答の妥当性は若干低いものであった。患者年齢、居住地については自己回答と聞き取り調査の結果は一致したが、職業や世帯所得については医療スタッフから尋ねにくいとの指摘を受けた。 以上より待機期間についてはカルテ調査、患者属性については患者の自己回答を用いることが望ましく、この知見をもとに今後の多施設調査への展開を進める。
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