引き続き平成24度も、大学病院、地域の病院、診療所等の患者から、アンケートによって医療の患者中心度と患者満足度、また診療録の調査から服薬コンプライアンスや血圧、LDLコレステロール、HbA1c、尿酸値、睡眠などの健康アウトカムを調査した。コンプライアンスについては、客観的なものと主観的コンプライアンスも測定した。また、アウトカムに交絡すると考えられる様々な因子の調査も行った。 以上の結果、患者中心の医療を多く行う医師に診てもらっている患者は、有意に患者満足度が高かった。しかし、患者満足度が高くてもアドヒアランスが必ずしも向上するわけはなかった。ただ、患者の主観的なアドヒアランスについては、患者満足度が高いと主観的アドヒアランスが有意に高かった。また、コンプライアンスが高いと脂質異常症の改善は、有意に高かった。さらに、患者中心度が高い医療を行っている医師に診てもらっている患者は、不眠については、そうでない医師に診てもらっているより、改善が大きかった。一方で、高尿酸血症においては、患者中心度が高い医師に診てもらっていると、有意に改善が低かった。にもかかわらず、このような患者においても、患者満足度が高いのはとても興味深いと思われた。 以上の結果をふまえ、患者中心の医療を教育するための方略と評価方法の開発を行った。ビデオによる振り返り方法、改訂版ポートフォリオ、患者からのフィードバック(患者への質問票)、そして指導医からの効果的なフィードバック方法を確立した。さらに、患者、医療従事者(研修医を含む)、そして学生(医学生、看護学生)とともに、タウンミーティングを実施して、患者中心性を実際に即した形式で、学生や研修医に学習させることができた。これらによって、患者中心の医療の学習(生涯学習を含む)を可能とするreflective practitionerの養成方法を開発できた。
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