地域在宅医療の現場では医療職種間の連携や情報共有が不十分で有り、現在の主な情報共有の手段としては療養者宅に置かれている「連絡ノート」が使用され、それに各医療者が訪問時に書き込むという一方向的な情報共有が行われているのが現状である。 当初、高齢者に対してもユーザーフレンドリーな情報機器として、据え置き型ゲーム機を使用して本研究を遂行する予定であった。しかし、研究開始直後、平成22年5月にタブレット型パソコンiPadが発売され、療養者宅にインターネット環境がなくても3G通信でインターネットが可能となり、しかもGUIを使用することにより高齢者に対し、よりユーザーフレンドリーであると認められたため、このiPadを使用して本研究を遂行することにした。 22年度はiPadの高機能を利用し、現在医療者間の情報共有の唯一の手段となっている「連絡ノート」をiPadに搭載するアプリケーションを開発することを目的とし、医師、理学療法士、ケアマネージャー間で検討を重ね完成した。候補となる療養者宅にiPadを配置し、大学に設置したサーバーを通じて各医療者間の情報共有の問題点を見いだし、改良を重ねた。このシステムを利用することにより、療養者の問題点を療養者宅で確認しなくても、基幹となる病院・診療所と各医療職間との情報連携が緊密にできるとともに、療養者自身は容易に情報発信できることも確認した。 これらの研究成果について、日本プライマリ・ケア学会第24回近畿地方会で発表した。
|