研究概要 |
平成22年度は地域在宅医療における多職種連携、情報共有の質の向上を目指すため、iPadの高機能を利用した「電子連絡ノート」というアプリケーションを開発し、医師、理学療法士、ケアマネージャー間で検討を重ね完成した。 平成23年4月から療養者宅で試験運用を開始し、8月には京都市内で行われた地域連携懇談会等を通じてシステムの説明を行うと共に参加者を募集した。 平成23年10月から京都府医師会と協働して,在宅療養者,医師,訪問看護師,ケアマネージャー,介護サービス事業所等に「電子連絡ノート」アプリをインストールしたiPadを各2ヶ月間貸与し,実証実験を行った。その結果,療養者からの情報発信が一番多く,また医療介護スタッフからは,訪問前に療養者の様子や変化が把握できるので役立ったという意見が多かった。 使用期間終了後には、本システムの使用前後での在宅医療における情報共有の状況について、アンケート調査および通信記録の分析を行いその内容を分析した。その結果、療養者および家族から医療介護スタッフに向けた情報が、最も多く記録されていたことが判明した。療養者からは血圧などの健康状態に関する事柄だけでなく、日々の体調などが報告されていた。医療介護スタッフからは、訪問前に療養者の様子や変化が把握できるので役立ったという意見が多かった。急変後に死亡した症例では、家族からスタッフにねぎらいの言葉が送られ、それを共有できるということが新たな有用性として評価された。また、日々の情報が他のスタッフからも注目されているという意識から、療養者の情報を密に伝えるようになったという報告もあり、このシステムの利用による在宅医療の質の向上が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
在宅医療・介護の恩恵を受けている療養者には,ガンや心不全末期の重症療養者から通常の日常生活を送っている療養者まで,ケアの程度には大きな差があり,それに伴い医療介護職種の関わり具合も変わってくる。家族・ヘルパーは,医療・介護の知識に乏しいにもかかわらず,療養者に一番多く接する機会が多いため,疾患の進行と共に医療専門職の持つ専門的なケアを施さなければならない場合が生じる。また,現状では,各医療職間でそのような技術的情報共有や交流をするための多職種合同カンフェラジスも頻回に開催することも難しい。 このシステムには通常のケア内容などの情報共有ができても,療養者ごとに最適な医療・介護のスキルなどを伝達する手段が組み込まれていない。医療・介護職や家族に専門的スキルの共有や平準化をして,療養者ごとに最適な「カスタムメイド在宅医療・介護」を確立し,在宅医療における質的向上を目指す必要がある。
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