研究概要 |
超高齢社会の到来により、高齢者の療養や看取りの場として地域における在宅医療の拡充・整備が急務となっている。本研究では、在宅療養支援診療所(在療診)の資源の充実状況と療養者の療養や看取り場所との関連性を明らかにすることを目的とした。 本年度は、東京都23区の在療診を管轄する関東信越厚生局東京事務所に「在宅療養支援診療所に係る報告書」の開示請求を行い、在療診の2008~2010年の活動状況に関する情報を取得した。2010年に注目すると、東京都23区の1,246の在療診が診療した合計患者数は83,486人であり、2009年より24.4%増加していた。2010年に死亡した合計患者数12,568人の死亡場所の内訳は、医療機関:5,949人(47.3%)、自宅:5,234人(41.6%)、自宅以外の施設など:1,385人(11.0%)であった。自宅での看取り数は前年より1,096人(9.3%)増加していた。2010年の東京都の死亡者総数は99,979人であるため、東京都の在療診が診療した死亡患者の割合は、概算で12.6%、自宅での看取り割合の概算は5.2%となる。特筆すべきは、在宅で看取られた患者の26.9%が年間50人以上の患者を在宅で看取っている在宅診療に専門特化した少数の診療所を利用していた。その一方で、在宅医療患者数が年間0人の診療所は8.8%、自宅での看取り患者数が年間0人であった診療所は全体の43.3%であった。 この様に、在宅医療に専門特化した在療診による在宅療養支援体制の整備が進んでいることが示された一方、稼動していない在療診が相当数存在していることが示され、今後に課題を残していることが判明した。
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