遠隔での医療機関間もしくは搬送機関との情報連携のための実行性のあるシステムを構築し、生体監視情報および映像情報を救急隊と医療機関との新たなコミュニケーションツールとしての有用性を明らかにする。既存の通信回線によるハイレゾリューション映像伝送システムを用いて、以下の項目について明らかにした。 1,救急現場から医療機関へのリアルタイムの生体監視情報および映像情報システムは平成23年度で1149件、1日平均で3.13件の使用実績であった。対象は重症例が62%で、中等、軽症例が38%であった。医療機関側で傷病状況を早く確認できるメリットを指摘する事例が90%を占めており、特に外傷事例における映像伝送の有用性が報告された。 2,詳細な傷病者状況や救急隊による処置の内容として、ビデオ喉頭鏡を用いた気管挿管事例について検討した。平成25年3月現在で、13名の心肺停止傷病者に対してビデオ喉頭鏡を用いた気管挿管が実施された。12名は映像伝送による医師の指示・アドバイスの下に気管挿管を試みた。なお、ビデオ喉頭鏡を用いた気管挿管は胸骨圧迫を中断することなく実施した。映像伝送下での12例のうち1名の傷病者において口腔内吐物による視野障害のため、気管挿管は実施されなかった。映像伝送下で気管挿管が実施された11例中9例において気管挿管に成功した。映像伝送下での気管挿管映像は極めて明瞭であり、気管挿管する救急救命士に対して、的確な指示を行うのに十分な映像であった。従来型喉頭鏡と比較して、実習症例が少なくて済むことから、従来の教育研修経費でより多くの救急救命士がビデオ喉頭鏡の病院実習を受けることができる。 3,平成23年度の救急隊からの一斉情報配信システム「こまっTEL」利用件数554件のうち、このシステムを利用して病院受入が決定した救急搬送受入困難事例は21%(112件)であり、その効果が確認された。
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