研究概要 |
【諸言】医療の質の向上と効率化を目指して、地域医療計画策定が都道府県単位で進められている。医療資源の所在、医療の需要供給の把握が必要で、レセプトデータ、DPC調査など、その把握に証拠を与える病院管理データの情報基盤が整備されてきた。しかし医療計画の策定実施は医療の需給関係や医療アクセスを変化させるので、その衡平性の確保に政策担当者や医療政策研究者は十分配慮せねばならない。今回、空間アクセス情報分析の基礎となる空間地理情報システムが、アクセス変化量の測定・推計をより汎用性の高いものとするために、北海道、福岡、熊本県の郵便番号情報のマスタ整備を行った。 【方法】総務省郵便番号情報(平成24年1月31日更新、以下総務郵便)とパスコ社郵便番号界地図(2011年度版、以下パスコ郵便)を対象に、3県の情報乖離を分析した。乖離とは総務郵便に存在しパスコ郵便にないもの(A)、あるいは乖離とは総務郵便になくてパスコ郵便に存在するもの(B)である。 【結果】北海道、福岡、熊本の総務郵便は7,999件、3,267件、1,861件、パスコ郵便は7,303件、3,180件、1,806件であった。乖離Aは696件、87件、54件で、乖離Bはなかった。 【まとめ】郵便番号情報で施設、医療圏特定が可能で、住所情報より患者特定がしにくい有用な地理情報である。総務郵便には地理情報としての悉皆性が、パスコ郵便には位置情報がある。それらの乖離を解消し郵便番号間で空間アクセス情報をマスタ化すれば、アクセスの変化量の測定推計が可能となり、医療需給の量的情報の変化量の推計と併せて、より精緻で現実的な地域医療計画策定が可能となる。需給変化と距離、時間などの空間アクセス変化を測定・推計し、予想される医療の質の向上と効率化のバランスを斜酌し、いくつかの政策選択の中から透明性を持って決定、実施、検証する枠組みに貢献できると考える。
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