チーム基盤型学習は、学生主導の学習や問題発見・解決能力を養成する問題基盤型学習の長所を生かしつつ、欠点(多大な人的・時間的コスト)を補うものとして注目されているが、本研究では、その両者の教育特性を、学生側の要素(学習の網羅性、学習の深度、学習意欲)および教育側の要因(教育運営に要するコスト、教員の満足度)の両面から調査する。 H22年度は、佐賀大学3年次カリキュラムにおいて、問題基盤型学習(21週・18症例)とチーム基盤型学習(24週・45症例)を実施できた。これは日本におけるチーム基盤型学習としては、最大規模のカリキュラムである。H22年度は導入初年度であったために、学生の学習行動、学習到達度、コスト、教員の満足度および教員の意識調査を、アンケートや面接調査を通して行いつつ、カリキュラムの充実に力を入れた。 その結果、チーム基盤型学習は、学生の自己学習を強化し、症例討論への積極性も向上させるなど、期待通りの学習効果を得た。一方、臨床推論能力や、事後の学習については、問題基盤型学習の方が効果的である傾向がみられた。教育運営に必要なリソースは、グループ討論に教員を配置しないチーム基盤型学習では、教員数を年間でのべ110名(47%)削減しえたことをはじめ、学習教材の準備や事前打ち合わせなどに要する時間についても大幅に削減しえたため、これらの人的リソースは、他の教育充実のための活動へと割り振ることができた。H23年度はさらに両社の特性を生かしつつ、双方に効果的な実施方法とその効果を検討する。
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