本研究計画の最終年度である平成26年度の主な活動実績は、5月に岡山で開催された日本プライマリ・ケア連合学会の第5回学術大会において、英国からグループ診療を実践している現役の開業医を招いて、プライマリ・ケアレベルの診療体制に関する国際シンポジウムを開催したことである。このシンポジウムは、本研究計画初年度の平成22年10月に、同連合学会内に「グループ診療の実践に関するワーキンググループ」を設置し、以後の毎年の学術大会において、「グループ診療」をテーマとするシンポジウムを継続的に主催してきたことの集大成として企画し開催された。シンポジウムのテーマは、「地域におけるプライマリ・ケア機能の充実強化のための開業形態を探る-複数医師によるグループ診療の普及に向けて-」とし、研究代表者(寺崎)の司会進行の下で、プライマリ・ケアでのグループ診療が普及している英国と米国の状況、およびそれらとは異なり、医師だけではない多職種によって構成されるグループによる地域ケアが試みられているフランスの事例について報告があった。また、指定発言として日本のプライマリ・ケア体制の現状に関する考察の発表があり、引き続いてシンポジウム参加者とのディスカッションが行われた。討論では、わが国のプライマリ・ケア提供体制の大きな弱点は、地域の診療所の多くが医師一人による単独開業、いわゆるソロ・プラクティスであるため、24時間対応などの在宅療養支援機能の強化が困難であることが改めて確認された。そして、「地域包括ケア」が志向される中においては、その問題の解決策の一つとして、医師の開業形態として欧米では一般的な複数医師によるグループ・プラクティスを、わが国でも普及させることを検討すべきであり、今後は医師の開業を規定している医療関連法規も含めて議論することの重要性について、今回のシンポジウム参加者によって共有することができた。
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