地方の中小医療機関に対応した臨床倫理コンサルテーションのシステムのあり方を検討するため、病院看護管理者を対象に、自記式調査票を用いた郵送調査を実施した。主な調査内容は病院倫理委員会の有無、設置年、態様、活動内容(倫理委員会の活動特性を、医療従事者に対する倫理教育・臨床倫理問題に関する指針の作成・臨床倫理問題に関する事例の相談対応の活動を行うHECと研究・治療・治験の倫理的審査の活動を行うIRBに分類)、3つの臨床事例(A:がん末期患者の延命治療に関する事例、B:糖尿病患者の人工透析導入に関する事例、C:重篤な障害がある新生児の治療方針に関する事例)への対応方法、臨床上の倫理的問題への対応状況とその評価、今後の解決方法についてである。 A県内165病院に調査票を郵送した結果、82病院から回答があり、無効回答の1病院を除き、有効回収率は49.1%であった。倫理委員会を設置する病院は増加してきており、HECの活動を主としている倫理委員会が半数以上あった反面、臨床事例の倫理的問題に対して倫理委員会が招集されることは少なく、医療チームに家族を交えたカンファレンスで対応している病院が多いことが明らかになった。また、臨床現場で発生する倫理課題への対処方法は、病院内で必ずしも統一されておらず、事案の性質によって異なっていることが示された。さらに、関係者のみで判断を下すという現在のシステムでは、倫理課題に対応不十分であると認識されていることが示された一方で、病院外部の人が問題解決に関与することに対して肯定的であることがうかがわれた。地方の中小医療機関における臨床上の倫理課題の解決方法として、客観的な意見を取り入れることができ、人材面においても有用かつ迅速に対応することが期待できる第三者機関の設立が、最も現実的な方法の一つであると考えられた。
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