研究課題/領域番号 |
22590482
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
平野 亙 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (10199086)
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キーワード | バイオエシックス / 患者の権利 / 臨床倫理 / 倫理的判断 / 倫理コンサルテーション |
研究概要 |
弁護士を対象に、医療分野での活動実態と臨床倫理コンサルテーションのあり方に対する法曹としての見解に関する実態調査を行った。弁護士情報は大分県弁護士会HPで公開されており、登録1年未満および高齢等により活動実績のない弁護士を除く110名に調査票を送付し、郵送法で回収を行った。 40名の弁護士から回答があり、全例が有効回答であった(有効回答率36.4%)。回答者の弁護士経験年数は1年から45年(平均14.0年)で、10年未満が26名であった。倫理委員会に所属する回答者は少数で、研究倫理委員会2名、HEC1名、その他の形態の倫理委員会2名であった。そのほかの活動として、現在医療機関の顧問弁護士が13名おり、現在または過去に医療裁判に関わった回答者は、医療機関側代理人10名、患者側代理人25名であった。 医療倫理に関する課題へのルール・規制のあり方としては、「患者の権利擁護に必要な事項は積極的に法制化すべき」が最多で17名(42.5%)、次いで「関係学会の自主的なルールづくり、規制に委ねるべき」9名(22.5%)であった。地域で倫理課題を解決するための仕組みについては、「第三者機関が形成され、医療機関に人材を斡旋」が最多で18名(45%)、次いで「医療機関が連携して体制を作る」が11名(27.5%)であった。また臨床倫理領域への弁護士の関与については、「医療機関の第三者委員」17名(42.5%)、「地域内の第三者機関からの派遣」10名(25%)、「臨床倫理委員会の委員」9名(22.5%)の順であった。 前年度、病院看護管理者を対象に実施した調査においても、地方の中小医療機関における臨床倫理上の課題の解決方法として、第三者機関の設立が最も現実的な方法の一つであるとの結論が得られており、医療関係者と法律関係者が同様に、倫理コンサルテーションのための地域システム構築の必要性を認めることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの医療機関ならびに弁護士を対象とする実態調査は、回収率が比較的高かったこともあって、意味のある結果が得られた。一方、大分県内で臨床倫理コンサルテーションを可能にするための組織づくりの展開が十分でない。臨床倫理実践の先駆者である板井孝壱郎教授に講師をお願いした講演会(7月30日)にオンブズマン関係者以外の出席者が少なく、この講演会を起点に検討会を構成することができなかったことがその一因である。
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今後の研究の推進方策 |
病院倫理委員会のあり方に関連して、24年度研究では、倫理委員会の活動実績がある病院において職員の意識調査を実施する。臨床倫理コンサルテーションのための地域システムの構築については、23年度調査に付随する意向調査で、検討会への参加希望をもつ弁護士が多数であったため、弁護士のほか、市民ボランティアおよび医療専門職有志による検討会を開催し、今後の確立に向けた方法論の検討を行う計画である。なお、この検討会は本研究助成終了後も継続して、ネットワークを構築するための検討を重ねる予定である。 臨床倫理コンサルテーションのための研修プログラムについては、患者の権利オンブズマンにおける諸活動により得られた知見をもとに、検討会での検討を加えて、倫理的判断において必要な「患者の権利」と倫理原則、課題分析の手法に関する必要事項を設定し、試案を作成する計画である。
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