本研究の目的は、医療保険と介護保険の保険者機能を明らかにし,その評価を行うことである.最終年度は,まず,保険者機能評価・対策を行う上で課題となる保険者機能に関連する要因を検討した.全1723の保険者(特別区を含む市町村)を対象とした調査結果から,それぞれの事業の実施状況相互の相関を検討した.保険料の収納率,保険料の口座振替納付者割合,特定健診受診率,特定保健指導実施率,特定保健指導終了率は相互に有意な正相関を示した.収納率は被保険者数と負相関を,加入者平均年齢と正相関を示した.その他,特定健診受診率は被保険者数と負相関を示すことを明らかにした.これらの結果から,保険者機能評価の際には被保険者数および加入者の年齢構成を調整する必要があることを示した.次いで三年度にわたる研究を総括した,これまでの医療保険および介護保険制度における保険者機能は,行政主導のもと医療費削減をめざした給付の適正化と保険料徴収に力点がおかれ,公平な医療および介護サービス提供体制の量的な整備を進めていくことに主目標が置かれていた実態を明らかにした.また,今後の保険者機能としては,保険者は広く被保険者の健康に責任を持つ主体として,被保険者・利用者の共同利益を最大化するための良質な医療および介護サービスが効率的に提供されるよう組織的に働きかけを行うことの重要性が増すことを示した.そのうえで保険者機能の指標として,①資格管理機能,②被保険者の権利擁護機能,③保険料徴収機能,④サービス提供機能,⑤サービス提供機関支援機能,⑥サービス審査・評価機能,⑦サービス提供機関監督機能,⑧情報収集機能,⑨情報分析機能,⑩情報提供機能,⑪保険財政運営機能,⑫自己評価機能,の各領域を提言した.また,第三者的立場で保険者機能を評価する部署・機関を保険者協議会または保健所などに設置する保険者機能評価制度の必要性を提言した.
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