本研究の目的は、マダガスカル共和国において2005年から導入されたマラリア迅速診断キット導入(RDT)に関して、医療者の認識、態度、行動がどう変わったのか、そのプロセスを聞き取り調査と診療記録から明らかにすることである。 23年度は、前年度に行った予備調査の結果をふまえて、アンタナナリヴ市街より半径15キロ以内にある診療所で抗マラリア薬処方に携わっている医療従事者すべてを対象者として聞き取り調査、診療記録調査を行った。インタビューの総数は201例であった。また、低マラリア流行地域であるトゥリアーラでは、治安の悪化により調査が十分に行えない状態が続いたため本年度も追加調査を施行できなかった。 また、前年度までに収集したデータに基づき、低マラリア流行地域(トゥリアーラ)と高マラリア流行地域(マジュンガ)における医療従事者の処方行動を比較した。その結果、高マラリア流行地域の医療従事者の方が、政府のマラリア治療指針を遵守(RDT結果が陰性の場合には抗マラリア薬を使用しない)する傾向があった。高マラリア流行地域では、検査結果陽性を経験することが多いため、検査結果を信頼するperceptionが強化されるのではないかと考えられた。RDT結果遵守には主監督者の訪問による監視頻度が高いことは、両地域に共通していた。これらの結果については、日本寄生虫学会で報告を行った。 質的研究については、昨年度までに収集、分析したデータを基にカテゴリーに修正を加える作業を継続中である。
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