本研究では、費用対効果を考慮し、かつ、薬価制度に期待されている医療費の適正化、画期的なあるいはアンメットメディカルニーズを満たす医薬品の開発促進、ドラッグ・ラグの解消といった様々な要素を包含した薬価制度のあり方を検討するための基礎となる研究を行い、それらの結果を基に新たな薬価制度を提案することを目的としている。研究方法としては、様々な制度案について仮に10年前からそれらがわが国に導入されていたとしたら、総医療費にどのような影響を与えたかや研究開発投資の増減につながるその製品の売上高にどのような影響を与えたかをシミュレートすることにしている。そこで、今年度は10年前に既に薬価基準に収載されていた新薬及び、その後今年度までに収載された新医薬品すべてについて、この間の実際の薬価の変遷と、それぞれの製品の売上高を示すデータベースの構築を進めた。また、新たな薬価制度案を検討するため、申請者が主宰する製薬企業の薬価担当者等をメンバーとする研究会(ファーマコエコノミクス研究会)のメンバーとの勉強会を5回にわたって開催し、「価値に見合った薬価」を実現する制度案を策定した。さらに、財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会が厚生労働省の委託を受けて実施する「薬剤使用状況調査委員会」に委員として参加した機会を利用して海外の制度についての理解を深めた。データベースの構築に時間がかかっており、シミュレートを実施するまでに至っていないが、今年度はその完成を急ぎ、既に検討したいくつかの制度案についてシミュレートを実施する。
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