本研究は東京大学大学院工学系で開発された患者状態適応型パス(PCAPS)を基にCOPD診療の電子化パスを用い診療均てん化,標準化を目指し,かつCOPD診療の質向上のための対策を検討することが目的である.平成24年度は以下の調査を実施した. 1)COPD増悪入院時の臨床判断,治療の違いをみるため,8つの調査施設で増悪治療内容の詳細調査を実施した.計153症例を集計し,気管支拡張薬,ステロイド,抗菌薬の基本3薬の投与パターンについては昨年までの解析結果と大きな差は認めず,3剤または2剤から漸減する場合に比べ,使用薬剤数が増減する場合に入院日数が大幅に延長し(16日:31.9日),この投与パターン比率は病院により異なる分布を示した.また,酸素やNPPVなど呼吸管理治療について解析し,11%はこれらの呼吸管理治療を伴わず,残り69%が酸素投与,20%がNPPVまたはIPPVによる呼吸管理を行っていた.治療薬と呼吸管理の内容別に層別化したところ,酸素投与のみの群は治療薬の漸減ができた場合に入院日数が短くなる傾向を示した.一方NPPVなど呼吸管理治療が加わった場合,ほとんどの施設は酸素投与のみに比べて入院日数が5-10日前後長いことが判明した.またNPPVの使用期間がほぼ同じでも全入院期間に平均10日以上の差がみられる施設間格差があり,さらに原因究明が必要と考えた. 2)COPD連携パスに付随する呼吸リハビリテーション,在宅酸素療法,吸入療法指導,訪問看護についてそれぞれの介入プロセスをPCAPSに移植する前段階まで完成した.このうちリハビリについては研究協力者により増悪後リハビリ介入調査として,協力施設における実態調査を実施.従来,理学療法士が経験的に実施していたリハビリの具体的評価項目を可視化し,さらに施設間比較を可能にした.訪問看護については増悪時の対応プロセスを可視化した.
|