本研究の目的は、経営状態が厳しい病院の財務状況の中で、病院が設備投資資金をどのように調達するべきかを明らかにすることである。 研究は、(1)病院設備投資での科学的に適正な意思決定理論構築、(2)銀行借入と債務者格付との相関検証、(3)公募病院債での資金調達コスト分析、(4)海外病院の資金調達研究の4項目で構成される。病院の資金調達の現状と課題については、金融関係の先行研究を調査し考察の後に単著、共著の書籍2冊と論文1編にまとめた。その後に上記4項目内、(3)と(4)に焦点を絞り、研究に着手した。(3)の公募病院債については、本年度中には発行事例はなかった。そこで同一格付機関における同水準格付の企業の公募債イールドカーブをダミーモデルにして格付・残存期間別のコストの検証実施により公募病院債での資金調達のをモデル考察、第9回日本医療経営学会にて報告を行った。現状では公募債発行に伴うイニシャルコストを吸収する発行金額に達しない場合には、公募病院債での資金調達は病院にとってメリットが見いだせないとの結論に達した。(4)の海外病院の資金調達研究に関しては、当初タイ国の上場株式会社立病院を研究対象に想定していた。ところが首都バンコクでクーデターが発生し、加えて洪水も災害もあったことから本年度はタイ国への渡航を断念、調査対象病院を中国の病院に変更した。 中国では北京、天津の国立病院を中心に病院の資金調達を調査。現在の国立病院では、国の初期病院設備投資と毎年の経常予算は別立てであること、経常予算は病院の独立会計であり、病院経営者が経営責任を持つことが判明した。初期設備投資の資金調達が不要(従って借入金返済・利払い・減価償却費計上がない)な病院経営の運営方法の利点、課題点につき第177回東海病院管理学研究会にて報告を行った。中国の病院経営改革は日本の国公立病院の経営改善への先行モデルの一つにすることができると結論づけた。
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