糖尿病の診断においては、血糖値あるいはHbAlcが測定されるが、そのためには採血(侵襲型)の検査が必要で、患者・被験者の苦痛や衛生上の問題もある。そこで、本研究においては、非侵襲型検査となりうる呼気中アセトン濃度による血糖値計測の利用可能性と、経済学的な観点からの有用性の検討を行うことを目的とした。本研究実施に先立ち、本研究関連機関において必要な倫理審査を行い、事前に承認を得た後、以下の項目について重点的に検討した。 1) 血液試料・呼気試料の収集ならびに分離分析条件の検討 治療内容(食事・運動、経口血糖降下剤、インスリン)、過去の血糖コントロールレベルをもとにHbAlcレベル別に分け、血液および呼気サンプルを収集した。研究協力者の施設において、通常の方法により血糖値、HbAlc値を測定するとともに、連携研究者の施設において、呼気中アセトン濃度の測定を行った。具体的には、糖尿病患者の呼気を採取し、試料前処理条件を最適化したマイクロ試料前処理デバイスを用いて濃縮した後、分離条件を最適化したガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)を用いて高感度測定した。本検討項目については、一層の性能向上を目指し、次年度以降も継続する。 2) 患者アンケート調査 非侵襲型検査の価値評価のために、「仮想市場法」を用いた支払意志額調査のアンケート用紙を作成した。アンケート調査では、呼気採取の金銭価値を計測するものとし、実施可能性について、医療関係者を対象に検討を行った。本検討項目も、対象者を広げて次年度以降も継続する。
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