統合失調症患者の退院に際して、生活機能を客観的に評価することは社会生活をより継続的なものにするために必要であると考えられる。22年度の研究では、統合失調症患者の退院の時期の決定の際の参考情報とするためのICFに基づいた生活機能尺度を作成し、平成20年9月から平成21年3月にかけて、精神科医療法人単科病院2施設の急性期治療病棟に入院した統合失調患者を対象に、ICF尺度評価および簡易精神医学尺度BPRS (Brief Psychiatric Rating Scale)評価を行った。対象となった患者は以下のクライテリアを満たす統合失調症患者に対する看護師により評価してもらった。対象となる患者のクライテリアは、平成20年9月から平成21年3月に入院となった患者で、(1)年齢が16歳以上60歳未満、(2)持続的に障害をもたらしている診断名がICD-10による統合失調症である、(3)認知症・物質による精神障害・人格障害・精神遅滞を合併している者は除外とした。ICF尺度およびBPRSを2施設20名の患者を対象に入院から退院まで2週間毎に測定してもらい102のデータが得られた。ICF尺度に関しては同時に2名の評価者により測定をしてもらい両者合わせて203のデータが得られた。 ICF尺度の因子分析を行った結果、第I因子「コミュニケーション能力」、第II因子「社会生活能力」、第III因子「セルフコントロール能力」、第IV因子「服薬管理能力」、第V因子「能動的行動能力」の5因子が抽出された。また尺度の内的整合性と評価者間信頼性もそれぞれ保証され、BPRSとの比較においては精神症状の変化との矛盾がなく外的妥当性も保証された。 以上の結果、本研究で開発したICF尺度は、入院中の統合失調症患者を対象とした生活機能を測定するツールとして一定の評価が得られたものと考えられた。
|