本研究では統合失調症患者の入院から退院までの症状および生活機能の推移を把握し、退院時期の決定の参考情報になり得るかを検討し、さらに我が国における統合失調症入院治療の適切な退院時期について考察する。 昨年度の研究において開発したICF尺度を用い、生活技能評価を行った。同時に簡易精神医学尺度BPRSを用いて精神症状の評価を2週間毎に行った。精神科医療法人単科病院2施設の急性期治療病棟に入院した統合失調患者を対象に、ICF尺度評価および簡易精神医学尺度BPRS(Brief Psychiatric Rating Scale)評価を行った。クライテリアを満たす統合失調症患者に対する看護師により評価してもらった。対象となる患者のクライテリアは、平成20年9月から平成23年3月に入院となった患者で、(1)年齢が16歳以上60歳未満、(2)持続的に障害をもたらしている診断名がICD-10による統合失調症である、(3)認知症・物質による精神障害・人格障害・精神遅滞を合併している者は除外とした。72名のデータのうち有効なデータ45事例を検討した結果、入院期間中のBPRSとICFの相関係数は0.4~0.7と相関が高く、精神症状が改善するのとほぼ並行に生活機能の改善が見られた。また、入院患者は6週間前後でいずれのケースも急激に症状および生活機能が改善しておりこの期間の集中的治療が重要であると考えられた。一方、12週間を超える入院となるケースにおいても精神症状・生活機能とも約8週間以降は正常に近い得点で推移していた。 症状と生活技能の両側面から患者の状態を評価するという視点は今後、統合失調症の転記を議論する上でも必要な視点である。今後は退院後の経過をアウトカム指標とし統合失調症治療における適切な退院時期を検討する。
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