【研究の目的】 統合失調症の退院の決定は精神症状だけではなく、社会生活技能や社会の受け入れ態勢など複数の要因が絡み、退院の評価基準を単純に設定できるものではない。本研究では、これまでに、統合失調症で入院した患者の入院中の精神症状と生活技能の変化を調査し、患者がどのような状態になれば退院となっているか現状を把握した。今年度は退院後、地域での患者の状況を把握し、退院時の精神症状や生活技能の状態と退院後の生活の関連を分析した。 【調査結果】 調査対象となった患者はクライテリアを満たす統合失調症の患者43名(内訳男性26名 女性17名)で平均年齢40.5歳(SD±12.6)平均入院回数は1.7回(SD±0.48)、平均在院日数は47.6日 (SD±34.6)であった。入院中の統合失調症患者の精神症状と生活機能は相関が高く精神症状が改善するのとほぼ平行に生活機能の改善されており、特に6週間前後で急激に症状・生活機能とも改善が見られたが、12週を超える入院の場合、BPRS、ICFともに正常に近い得点で推移していることが明らかとなった。 うち40名の退院データが収集でき、80%の患者が入院前の居住先に退院していた。社会資源の利用状況は、訪問看護が10%と最も多く、次いで、共同作業所利用7.5%、デイケア利用5%、ACT利用2.5%、その他17.5%の患者がホームヘルプや地域包括支援センターなどのサービスを利用していた。また、12.5%の患者が退院後、入院前の仕事を休職あるいは退職していた。患者は再入院の回数や地域滞在日数については退院時の状態や在院日数との関連は見られなかった。
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