本研究によって、産科勤務医の労働と賃金を検討するうえで女性医師が多い職場であることを十分に考慮したうえで施策を講ずることの重要性が浮き彫りとなった。すなわち、産科勤務医不足の解消には、一方の賃金等の金銭的インセンティブによる離職防止の効果は限定的で、かつ年齢階層別で異なり、特に女性医師の場合、出産や子育ての重なる30歳代においては、長時間勤務や当直勤務など労働条件を緩和するなどのワーク・ライフ・バランス支援策が有効であることが示唆された。 したがって、産科勤務医の離職防止マネジメント策としては、この増加傾向が著しい女性医師に注目し、20歳代は賃金よりも技術習得ができるキャリア開発の場の提供を、30歳代は出産や子育て等のワークライフバランス支援策として、時短勤務やワークシェアリング等を、さらに、40歳代の子育てを終えた世代の医師には、賃金を上昇させ、開業医との報酬格差の是正を行うことが施策として有効であるとの結論を得た。
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