研究概要 |
本研究の目的はMDM2阻害薬によるp53活性化が、胃癌に対し有効であるか否かを明らかにすることにある。MDM2阻害薬の一つである低分子化合物Nutlin-3を用いて、その抗腫瘍効果を種々の胃癌細胞株でin vitroとin vivoにおいて検討した。平成22年度は各種ヒト胃癌細胞株のp53, MDM2の発現をウェスタンブロット法にて確かめ、Nutlin-3の抗腫瘍効果をMTT assayで解析した。その結果、MDM2の発現は細胞株で差があるものの、p53野生型の胃癌細胞では、その発現量にかかわらずNutlin-3用量依存性に-80~-100%の高い抗腫瘍効果が示された。p53野生型MKN45細胞株の担癌マウスを作成し、Nutlin-3を腹腔内投与した。その結果、コントロール群に比べ、投与群で明らかな抗腫瘍効果が確認され(-42%)、この効果は5-FUの併用によりさらに増強した(-80%)。以上の成果をCancer Science誌において発表した。今回の我々の研究はNutlin-3が新たな胃癌治療薬として有望であることを示した初めての報告であり、胃癌最多発国である我が国にとって非常に意義深い。今後、様々なシグナル伝達経路の観点からNutlin-3の作用機序と有効性の関連を明らかにするとともに、他のMDM2阻害薬についても検討を行っていく予定である。
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