本研究の目的は、近赤外時間分解分光法を用い下肢の反応性充血測定法を確立することである。反応性充血測定は、駆血帯を用いた駆血・解放によって生ずる血流増加量により評価され、血管内皮機能測定法として用いられている。近赤外時間分解分光法は、3 波長(760nm、800nm、830nm)の半導体パルス光源を用いて、生体深部組織内の酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、全ヘモグロビン濃度を定量的に評価することが可能であり、酸素化ヘモグロビン濃度の変化を測定することにより組織内動脈血流の変化を連続的に計測することができる。平成22年度は新規反応性充血測定法の安定性・再現性に重点を置いた検討を行った。血圧脈波検査装置にてABI(Ankle Brachial Pressure Index、足関節上腕血圧比)が1.0以上の男性を対象として、近赤外線時間分解分光法による上肢および下肢の反応性充血測定を行った。上肢に比較し下肢反応性充血測定はやや安定を欠いたため、駆血位置、測定プローブ位置について再検討を要した。平成23年度は細部に渡る測定条件がほぼ決まり再度データの蓄積に取り掛かり、下肢反応性充血は、上肢と比べ反応性充血の立ち上がりやピークが緩やかとなる傾向がみられた。平成24年度は20歳代、50歳代、70歳代の男性を対象に上下肢の反応性充血のデータ収集を行った。20歳代群、50歳代群、70歳代群において上肢の反応性充血応答は群間の差異は見られなかったが、下肢反応性充血応答は20歳代群と比較し50歳代群、70歳代群で低下していた。血管機能低下の早期検出には、下肢反応性充血応答が有用である可能性が示唆された。今後30歳代、40歳代について下肢反応性充血応答を測定し、下肢反応性充血応答の低下が始まる時期について検討しする予定である。
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