研究概要 |
近年、がん薬物療法において新たに臨床導入された抗がん剤の中には、有害事象として末梢神経障害を引き起こす薬剤が含まれる。末梢神経障害が重篤な場合、治療の遂行が不可能となり、治療効果の妨げとなる。本研究では、オキサリプラチンによる末梢神経障害の出現と関連する遺伝的背景を明らかにし、より安全かっ効果的ながん薬物療法の推進に寄与することをめざしている。【方法】当院外来化学療法室にてオキサリプラチンを含む化学療法(mFOLFOX6療法)を行った進行大腸がん患者51名を対象として、除去修復交差相補群1(ERCC1)およびグルタチオンS-転移酵素(GSTP1)の一塩基多型(SNP)を決定し、末梢神経障害の発現までの期間および重症度との関連を検討した。【結果】ERCCC1 C118Tにおいて、T/T genotypeの患者はC/CおよびC/T genotypeの患者に比ベグレード1の神経障害発症までの期間が有意に短く(p=0.0162, Wilcoxon test)、GSTP1 Ile 105Valにおいて、Ile/Ile genotypeの患者はIle/ValおよびVal/Val genotypeの患者と比べ神経障害発症までの期間が有意に短かった(p=0.0321同)。グレード2以上の重篤な末梢神経障害の発症頻度はいずれのSNPにも関連は認めなかった。【結論】ERCC1とGSTP1の遺伝子多型は、オキサリプラチンによる末梢神経障害の発現までの期間と強い関連がみられた。これらの遺伝子多型は末梢神経障害の予測因子であるとともに、その発症機序に関わっている可能性がある。【23年度予定】以上の結果をふまえ、さらに対象患者を増やし末梢神経障害とがん薬物療法との関連、また、保存DNAを用いて新たに文献的考察が得られたSNPについても検討し評価を行う。
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