研究課題/領域番号 |
22590501
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井上 博文 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70321635)
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キーワード | 血管新生 / 悪性腫瘍 / 血管内皮細胞 / VEGF / インビボイメージング |
研究概要 |
悪性腫瘍において血管新生は、腫瘍形成から多臓器転移にいたるまで重要なイベントと考えられている。その生体内の様子を観察するためには、組織切片を作成し、血管内皮特異的抗体を用いた免疫組織染色によって血管密度等を検出することが一般的である。しかしながら従来の方法では、マウスサンプルをその都度殺処理しなければならないため、同一個体サンプルで経時的にダイナミックな血管形成変化を観察することには限界がある。よって血管新生特に腫瘍血管新生の同一個体で時空間的観察を行う新たな方法があれば、血管形成を中心とした腫瘍病態のより詳細かつ新しい知見を得ることが可能であり、そこから新たな抗腫瘍戦略が構築できると考えられる。 我々は、血管新生において中心的な働きをする血管内皮増殖因子(VEGF)によって発現誘導される遺伝子BAZFの発現調整機構を解析したところ、そのメッセンジャーRNAの安定性の増強が発現調整機構の中心的役割を果たしていることが明らかとなった。特にそのメッセンジャーRNA3'末端側の非翻訳領域(3'UTR)がその安定性に重要であったことも同時に分かったために、この領域を用いた血管新生時安定志向可視化プローブの作製についての準備を進めた。まずBAZF3'UTR領域をルシフェラーゼ遺伝子下流に挿入しヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に導入してVEGFやフォルボールエステルで刺激したところ、数倍のルシフェラーゼ活性の上昇を認めた。しかしながら、その活性値が低いために生体内での検出が困難なことが予想されたため、血管新生因子COX2遺伝子の3'UT耳に着目した。この3'UTRを蛍光タンパク質Azami Green遺伝子下流に挿入してHUVECに導入したが、VEGF刺激による蛍光シグナルの上昇が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BAZFやCOX2の3'UTRによるレポーター遺伝子活性が十分に得られなかったため、血管新生時安定志向可視化プローブの作成は困難であった。しかしながらマウス個体全体の血管新生をモニタリング可能にするため、血管内皮特異的ルシフェラーゼ遺伝子発現マウスを構築して血管新生活性を発光で可視化するシステムを立ち上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
大きな問題点として、期待していた血管新生関連遺伝子3'UTRを用いた血管新生時安定化可視化プローブは、十分なプローブ活性を認めることができなかった。 そこで当初のプロジェクトの目的である同一個体サンプルでの時空間的血管新生のモニタリングを達成するために、研究計画を以下の様に変更するようにした。Tie2遺伝子にてCreリコンビナーゼを発現するマウスとloxPで挟まれた遺伝子領域で発現調整されるルシフェラーゼ遺伝子発現マウスとの掛け合わせにより血管内皮特異的ルシフェラーゼ発現マウスを作成した。このマウスへの腫瘍移植による血管新生活性モニタリングが可能であることを確認している。本年度はこのシステムを基にして、抗腫瘍血管剤の効果について検討を進める予定である。
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