低侵襲で得られる細胞系である抜去毛包に付着する毛包バルジ領域幹細胞より得られたケラチノサイト(毛包バルジ由来ケラチノサイト、hair follicle-derived Keratinocyte : FDK)を、オーダーメイド医療に利用することを目的とした。 アトピー性皮膚炎(AD)履歴を有するドナー由来FDK(A-FDK)と対照群由来FDK(C-FDK)での遺伝子発現を解析した。A-FDKでは、無処理ではインフラマゾームの構成分子のNLRP2発現が、インターフェロンγ添加24時間ではIL32産生能、インフラマゾームによるpro-IL1βから成熟型IL1βの転換能が高いため、IL8やCXCL1等の産生能が上昇することが示唆された。 続いてADとの関連性が報告されるIL1RL1,IL4,IL4RA,IL12B,IL12RB1,IL13,CCL5,CCL11,CCL17,CCR4,IRF1,IRF2,MS4A2,TNFA,ADRB2,PLA2G7,DUSP1,RAB31,IFITM2& IFITM3遺伝子とその周辺領域30か所のSNPと、IL32発現誘導の関連を調べた。その結果、CCL5に近接するrs2107538とCCL17に近接するrs5030969がADの有無に弱い相関性を示した(オッズ比 2.45と2.47,何れも90%信頼区間においては有意、95%では有意性無し)が、IL32発現誘導能とは相関しなかった。よってSNPタイピングによるAD予測は困難であった。 続いて、インターフェロンγ添加直後から24時間までのFDKでの遺伝子発現変動を解析した。その結果、STAT1のリン酸化制御因子の発現差が見出された。以上より、ADへの寄与ファクターを研究する上で、FDKを利用した遺伝子発現解析は有効なツールであることが示された。
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