膜タンパクによる物質輸送は生体恒常性維持の基本的なメカニズムと考えられていることから、組織中における物質輸送通路である「薬物トランスポーター」と「ギャップ結合による細胞間連絡」との関連を明らかにすることにより、物質の組織内移動機構、生体恒常性維持機構および病態の解明につなげ、創薬科学、毒性予測および薬害の防止に資することを目的として研究を実施した。 我々は腎臓に焦点を当て、ヒト腎臓由来細胞株HK-2細胞およびHEK293細胞を用いて、各細胞の全てのギャップ結合タンパクであるコネキシン(20種類)についてmRNA発現を調べ、薬物トランスポーターとしては、代表的SLCトランスポーターmRNA発現についても解析し、同時に発現しているCxとSLCトランスポーターの組み合わせを調べたところ、薬物輸送に関与するSLCトランスポーターとCxが同時に発現している組み合わせはなかった。また、HEK293細胞のSLC22A6、SLC22A8、SLC22A11およびSLC22A12安定発現細胞株を作製し、免疫共沈降法によりタンパク質相互作用について解析したが、直接相互作用している結果は得られず、細胞骨格であるアクチンを介して間接的に相互作用することもなかった。 次に、物質の組織内移動機構解明のため、トランスポーターを介して細胞内に取り込まれた輸送基質がギャップ結合を通って隣接している細胞に移動するかどうかを放射標識した基質を用いて解析した。SLC22A12を介して細胞内に取り込まれた尿酸は、ギャップ結合で連絡している隣接した細胞へと尿酸を移動させることにより、取り込まれる尿酸量が増加していることが示唆される結果を得た。 本研究ではギャップ結合とトランスポーターがタンパク質相互作用する結果は得られなかったが、ギャップ結合を通過する物質の同定に応用可能なアッセイ法を確立することができた。
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