研究課題/領域番号 |
22590511
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研究機関 | 財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
芦野 洋美 財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (40222608)
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研究分担者 |
小野 富男 財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 基盤技術研究職員 (60231239)
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キーワード | 血管新生阻止 / 海藻 / 酸性多糖 |
研究概要 |
本研究の目的は、海藻特有の硫酸多糖およびその類似体、また抗酸化成分の中から強力な血管新生阻害能を有する物質を探索しその制御機構を究明して、腫瘍血管新生の治療と予防に道を開くこと、更にこれらの物質が骨転移阻止物質として有効となり得るかどうかを明らかにし、付加価値の高い優れた治療、予防薬を開発することである。 本年度はまず、紅藻のクロハギンナンソウから、エタノール溶出画分と種々の多糖画分の抽出を行い、血管内皮細胞とin vivoのアッセイに使用可能な量を調整できた。クロハギンナンソウの抽出多糖画分は、褐藻のフコイダンに相当するカラギナンを含んでいるので、強い血管新生阻害活性が想定される。血管内皮細胞や鶏胚漿尿膜(CAM)を用いて、各分画の血管新生阻害効果を詳細に検討している途上である。エタノール溶出画分は抗酸化成分を含むので、血管内皮細胞においてNF-κB/IκBに変動をもたらすかどうかを調べている。 今後のin vivoアッセイに有用なマウスの皮下を用いた血管新生阻害活性の検討を、まずフコイダンを用いて試みた。基底膜成分とbFGF、VEGFを小カップに入れ、これをマウス皮下に挿入し血管新生を誘導した。ここにフコイダンを加え、2週間後の血管新生阻止活性を明らかにした。内皮細胞管腔形成やCAMではフコイダンは強い阻止作用を発揮したが、マウス皮下では微弱な抑制のみであったり明瞭な抑制が認められない場合があった。げっ歯類特有の炎症と投与量の不足も考えられるが、この原因究明も必要となった。 また我々は、本補助金による研究の開始前に、海藻特有の硫酸多糖の構造に類似した高分子体に強い血管新生阻害作用の存在することを発見しているが、今年度は高分子ではなく、極めて低分子の類似物質(特許取得の都合上公開できない)に、強い血管新生阻止活性が存在することを、CAMアッセイにおいて発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管栽生阻害活性測定のアッセイのため、海藻からの抽出画分を十分量獲得できるか、当初懸念していた。しかし、現時点で使用可能な質と量の抽出画分が得られてきており、アッセイの進捗状況は良い。数種の海藻からも次々と抽出を進めている。また血管新生を阻害する薪規の硫酸多糖構造類似物質も発見したので、薪しいアッセイ法も導入し、研究の展開を次の段階へ導くことが可能になった。よって、ほぼ順調に進んでいる。ただ、特許申請の可能性を探っているため、まだ論文や学会発表ができない部分がある。この点について早目に解決したい。
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今後の研究の推進方策 |
初期の方針に則って推進する。 3種以上のアッセイ法を用いて、厳密に血管新生阻害作用を有する画分を特定する方針である。これには、血管内皮細胞の管腔形成実験、CAM法、新しい遊走アッセイ法(Radius Assay)、蛍光物質を用いた血管透過性試験、などを駆使して推進する。特定後、筋芽細胞を用いてその分画の細胞融合試験を行い、顕著な分画のみを更に検討する。最終的にマウスを用いて転移阻止作用を検討する。
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