研究概要 |
(目的)今年度はMyelodysplastic syndrome (MDS)とToll-like receptor (TLR)の関係を調べる目的で、MDS患者と骨髄に異常のない患者の骨髄単核球におけるTLR発現の解析を行った。 (対象と方法)MDS患者は、芽球がapoptosisを起こすことにより無効造血の起こるRCMDと、白血病に近く腫瘍性疾患の性格をもつRAEB-2に分けた。解析の対象とした細胞は、骨髄芽球(CD34+、CD34-)、リンパ球、顆粒球であり、TLR1,2,4,7,9についての発現堺析を行った。 (結果と考察)骨髄に異常のない検体において、骨髄単核細胞をCD34(-1)芽球、CD34+芽球、リンパ球、顆粒球に分画して、それぞれTLR1,2,4,7,9の発現を検討した。芽球においては、TLR1,2,9がリンパ球、顆粒球に比し高発現していた。芽球のCD34発現の有無との関連は明らかではなかった。CD34(-)芽球はCD34(+)芽球に比しやや分化した芽球であるが、TLRの発現には差はなかった。リンパ球および顆粒球のTLR発現は既報と差がなかった。MDSの中でRCMD群における芽球ではTLR発現が正常骨髄に比し全般的に低下しており、TLR1およびTLR2の発現は明らかに低下していた。この傾向は、CD34(-)芽球で顕著であった。一方、この低下はRAEB-2群では明らかではなかった。この結果より、MDSの無効造血を来たす原因とされるapoptosisには、TLRの関与は少なく、他のapoptosis経路の関与が大きいことが推測された。MaratheftisらはMDS患者のすべての血球においてTLR2,4が高発現しており、特にTLR4が造血細胞のapoptosisに強く関与していると報告している。しかし、我々の検討では、芽球、リンパ球、顆粒球すべてにおいてTLRの高発現は認められず、RCMD群では、TLR1およびTLR2の発現は明らかに低下していた。Maratheftisの対象患者は、低リスク群と高リスク群がほぼ半数ずつ含まれている。このように病態に差があると考えられる患者を包括して検討したため、我々の結果と差がでたと考えられる。低リスク群と高リスク群では、TLRの発現に差があることが推測される。今後、症例を追加し、MDSを病型毎に分類して検討していく予定である。
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