研究概要 |
目的:骨髄異形成症候群(MDS)は、1)造血幹細胞のapoptosisによる無効造血、2)白血病化、3)自己免疫疾患の高頻度合併を特徴とする。一方、Toll-like receptor (TLR)は、type I transmembrane receptorのひとつで、感染に対する自然免疫担当細胞の活性化に重要な役割を担っている。近年、TLRはapoptosis, 腫瘍免疫、および自己免疫疾患の発症に関与していると報告されている。よってMDSの3つの特徴にはTLRの関与が強く示唆されるため、その造血幹細胞等を対象としTLR familyの発現を検討した。 対象と方法:MDS患者21名、MDS以外の貧血患者9名からへパリン加骨髄液を採取し、単核球を分離して使用した。また、骨髄に異常の無い対象群として、悪性リンパ腫(ML)患者7名、形質細胞腫患者1名からへパリン加骨髄液を採取し、単核球を分離したものを使用した。 結果:①正常骨髄のTLR1,2発現は芽球においてリンパ球、顆粒球より高かった。TLR7,9の発現はリンパ球で低かった。②TLR1の発現は、正常に比しMDSのRA/RCMDの芽球において低く、RAEB1/2で高かった。③TLR4はMDS芽球において高かった。④TLR9の発現はMDSのすべての血球で低かった。⑤TLR2、TLR4の発現には差はなかった。 考察:MDS芽球では、正常群と比し各TLRの発現に明らかな差を認めた。また、病型による差を認めた。よって、MDSの発症、病型、白血病への進展にTLRが関与していることが示唆された。
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