研究概要 |
MDM2は,癌抑制遺伝子p53の負の調節因子である。MDM2のイントロン上のプロモーター領域に一塩基多型(T→G転位:SNP309)があり,GG typeではMDM2の活性化によりp53が不活化され易い.アジアを中心とした複数の大規模比較試験で、SNP309が特に喫煙者において肺癌の発癌リスクに関与していることが示された。禁煙外来でSNP309を簡易的に検索できれば、日本人の約3割を占めるGG type対し、喫煙により肺癌に成りやすい体質であることを示すことができ、禁煙外来における禁煙成功率(約20%前後)をより高めることが期待できる。現在,高速・高感度な遺伝子増幅法(SMart Amplification Process法:SmartAmp法)によるSNP309の検出キットを理化学研究所と共同で開発中である.SmartAmp法はTP(turn-back primer),FP(folding primer),BP(boost primer),2本のOP(outer primer)よりなるが、現在、MDM2SNP309検出キットで用いるprimerの候補としてTP16種類、FP16種類、BP4種類を設計・作成した。現在、それぞれを1本づつ掛け合わせ、実際のgenomic DNAを用いてreal-time PCR装置で増幅効率を検討している。2011年中には、最も増幅効率が良く、かつ非特異的な増幅も生じない5本のprimerセットのscreeningを終了し、TA,CGそれぞれのSNPを検出することができる検出キットを完成する予定である。また,検出キットを作成後、解析精度の評価を行うために、約250症例の肺腺癌の血液DNAからPCR-RFLP法でMDM2SNP309を、さらに腫瘍検体DNAからEGFR遺伝子変異の解析を現在までに終了している。
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