研究概要 |
原発性肝細胞癌の病理組織診断に有用であるClathrin heavy chain(以下CHC)の,各種癌組織診断における有用性について検討した。千葉大学医学部附属病院で切除された,肺,食道,舌,胃,大腸,直腸,膀胱,前立腺,乳房,卵巣,甲状腺などの進行癌各5~30症例のパラフィン包埋標本を試料とし,CHCの免疫組織化学染色を行った結果,いずれの癌においてもCHCが強く発現していた。特に,いくつかの癌では,癌部と非癌部の染色性の差が際立っていたことから,上皮内腫瘍等の,病理組織診断が比較的困難とされる症例についても,更に検討した。その結果,CHCは正常あるいは良性病変に比較し,進行癌だけでなく,上皮内癌の細胞質においても,有意に強く発現していることが確認された。したがって,CHCの免疫組織化学染色は,いくつかの癌の病理診断マーカーとして有用と考えられた。今後,針生検材料等の微小な組織についてもCHC染色の有用性を検討し,通常行われるヘマトキシリン・エオジン染色での病理組織診断が困難な症例における,正確な病理診断に貢献させたい。 また,抗体を用いた体液中CHC検出法の確立を試みた。まず,HPLC法によって各種癌患者血清中のアルブミンやグロブリン等のメジャー蛋白質を除き,化学発光を用いたウエスタンブロット法により,バンドが得られるかどうかを確認したが,CHCの存在は確認されなかった。次に,CHCの抗原認識部位の異なる抗体を入手し,血清中CHC検出のための酵素免疫分析法(ELISA)を開発した。本検出法の検出特性の評価はすでに終了し,現在各種癌患者血清におけるCHCの存在量の検討を行っている。また、血液中に存在するCHCの自己抗体の検出法の開発も試みている。
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