研究概要 |
生体内での血小板活性化を知る血液検査は,動脈血栓症準備状態の検出に有用である.血中soluble CLEC-2(sCLEC-2)測定が生体内の血小板活性化を示す測定法であると考え,臨床応用を目指した基礎検討を行った. 生体内での血小板活性化を検討する際,採血時に血小板が活性化されるため,その影響を排除しなければならない.PF4, β-TG測定法での採血検体は,採血の影響が出ないように特殊な採血管を用いて煩雑な処理を行っている.この採血検体と日常用いられているEDTA, クエン酸の真空採血管を用いた検体についてsCLEC-2測定を実施した結果,PF4, β-TG測定検体とEDTA, クエン酸の真空採血管検体の間に有意差は認めなかったことから,以後の検討は,EDTA真空採血管を用い,3000 rpm, 10分遠心後の上清250 μlを測定検体として使用した.10例のボランティア血漿の平均値±3SDで求めたカットオフ値は,125 pg/mlであった. 冠動脈疾患患者検体を用いた検討において,冠動脈に狭窄を認めなかった患者群と安定狭心症患者群,急性冠症候群患者群にてsCLEC-2測定を実施した結果,急性冠症候群患者群にて有意な高値を認めた(p < 0.05). CLEC-2を分解する酵素についても検討した.血小板にはADAM10と17が発現していることが知られている.ADAMファミリーを活性化するNEMで血小板を処理すると,sCLEC-2の放出が認められた.ミトコンドリアの脱共役剤であるCCCPはADAM17を活性化することが知られているが,CCCPで血小板を処理してもsCLEC-2放出は認められなかった.また,MMP-2阻害剤でもsCLEC-2の放出の抑制を認めたことから,ADAM10, MMP-2がsCLEC-2放出の責任酵素ではないかと考えられる.
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