本年度は抗シトルリン化蛋白抗体存在下でシトルリン化したフィブリンをmatrix metalloproteinase-3を用いた分解抵抗性試験の追加実験を行った。しかし、シトルリン化フィブリンは抗シトルリン化蛋白抗体存在下で予想に反して有意な分解抑制が認めらなかった。すなわち、シトルリン化フィブリンのmatrix metalloproteinase-3による分解性は正常人IgG存在下の分解性、あるいは抗シトルリン化蛋白抗体存在下の非シトルリン化フィブリンの分解性において、分解時間や分解産物において差が認められなかった。 したがって、3年間の研究で抗シトルリン化蛋白抗体存在下でシトルリン化したフィブリノゲンおよびフィブリンをプラスミン、白血球由来エラスターゼ、キマーゼ、トリプターゼ、matrix metalloproteinase-3を用いて分解試験を行い、いずれの酵素においても、予想に反して有意な分解抑制が認めらなかった。むしろ、抗シトルリン化蛋白抗体存在下でシトルリン化したフィブリンの分解は、非シトルリン化フィブリンの分解性よりも促進するという結果であった。これらのことを第58回日本臨床検査医学会学術集会(岡山市)と第52回日本臨床化学会年次学術集会(盛岡市)で口頭発表を行った。しかし、残念ながら予想通りのポジティブな結果が得られなかったため、論文作成を断念した。
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