研究課題
本研究は新たな疾患組織検査手法として、質量顕微鏡法の実用性を検討するものである。質量顕微鏡法は組織切片を二次元に質量分析することによって、組織切片に存在する生体分子の局在を可視化する手法である。疾患検査法として質量顕微鏡法の実用性を判断するためには、多くの疾患に適用が可能であることを示すことが重要である。平成22年度まではATGL変異症を解析し、代謝異常が引き起こされている生体分子の同定に成功した。平成23年度は、粥状動脈硬化の解析に本手法が適用できるかどうかを検討した。粥状動脈硬化モデル血管には60週齢のアポEノックアウトマウス冠動脈起始部を用いた。コントロールは粥状動脈硬化発症前の12週齢のアポEノックアウトマウス冠動脈起始部を用いた。両者を質量顕微鏡法によって解析し、比較した結果、粥状動脈硬化病巣モデル血管では、m/z 671.6(コレステロールエステル)、m/z 673.6(コレステロールエステル)、m/z 804.5(ホスファチジルコリン)、m/z 832.5(ホスファチジルコリン)、m/z 566.9(未同定)が特徴的に検出された。これらの分子種の可視化は、従来の検出法では達成できないものであり、質量顕微鏡法は粥状動脈硬化病巣の解析においても有効であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
研究成果をもとにした論文が1報受理されたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
本研究課題の目的達成のためには、引き続き多数の検体を解析することが重要であると考えられる。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Atheroslerosis
巻: 217 ページ: 427-432
10.1016/j.atherosclerosis.2011.03.044