研究概要 |
多剤耐性緑膿菌(MDRP)には複数の耐性機構が複雑に関与しており, 耐性機序の違いが検出感度や特異性を大きく左右すると予想された. 23年度までの研究成果をもとに薬剤添加濃度などに改良を加え, 高感度で正確なMDRPスクリーニング培地を確立した.【研究目的】最終年度は完成したMDRPスクリーニング培地を用いて病院環境調査を行ない, 病院環境調査における本培地の有用性および利便性について評価する. 【研究内容】名古屋大学医学部病院で調査の許可がえられた2病棟のナースステーションの流しや畜尿所など20カ所の拭き取り調査を実施した.【意義および重要性】医療現場では病院感染防止の成果の向上と対費用効果の両立が望ましい. 本研究で確立したMDRPスクリーニング培地は, 簡便性と迅速性を併せ持つ安価な検出法である. 本培地の導入による, 病院感染対策の質の向上および費用, 検査時間の短縮など効率化への貢献度は高く, 導入の意義は高いと考える. 【研究成果】2病棟のナースステーションの流しや畜尿所など20カ所の拭き取り調査を実施した結果, 病院環境中からは, 大腸菌, 肺炎桿菌などの腸内細菌科6菌種と緑膿菌, アシネトバクター属菌などのブドウ糖非発酵菌8菌種が検出された. これら病原細菌が多く検出された場所は, 畜尿機, 流しのシンク部分と流しにおかれたスポンジであった. 病院環境中に生息する薬剤耐性菌については, 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科菌種とβ-ラクタム系抗菌薬耐性もしくはアミノ配糖体耐性のブドウ糖非発酵菌が検出されたが, これら薬剤耐性菌は, MDRPスクリーニング培地に発育することはなく, 偽陽性は認められなかった. また,本培地の使用により, 病院環境調査に必要なコストは, 従来の40分の1以下, 時間も3分の1と大幅に短縮することが可能となった.
|