研究課題
静脈血栓塞栓症(VTE)の発症は、診断技術の進歩に伴い日本人にも決して少なくないことが明らかとなり、日本においても高齢化社会を迎えた増加するVTEの発症リスク因子の解明が重要な課題である。DVTの発症要因として、現在まで様々な先天性血栓性素因の原因遺伝子変異が報告されてきたが、未だその原因遺伝子変異が不明な症例も多い。我々は、既知の血栓性素因(アンチトロンビン、プロテインC、プロテインSの各欠損症等)の解析が進められたが、その原因特定に至らなかった遺伝性血栓症家系において、新しいリスクファクターとしてプロトロンビン遺伝子変異を同定したNEJM誌(2012.6.21)に報告した。同定したプロトロンビン遺伝子変異は、活性後の変異トロンビンにおいてアンチトロンビン結合部位でのミスセンス変異がみられ、この異常トロンビンはアンチトロンビンによる凝固制御が十分でない血栓性素因となることが予想された。組換え変異型プロトロンビンの活性を調べたところ、野生型に比べ凝固一段法では16%、凝固二段法では29%とかなりの低下を認めたが、合成基質法では75%の活性を保有していた。この違いは凝固法基質のフィブリノゲンが合成基質に比べ巨大分子であることによるものと思われた。一方、組換え変異型トロンビンは野生型に比べアンチトロンビン結合能が極度に低下し、トロンビン生成試験での総トロンビン生成量増大、トロンビン生成終了時間延長を認めた。すなわち、本変異はプロトロンビンの凝固活性を軽度低下させるものの、活性化された変異型トロンビンは高度なアンチトロンビン抵抗性を示すことが明らかとなり、本症例の血栓症発症の要因であることが推察された。また、血漿検体でのアンチトロンビン抵抗性のスクリーニング検査法を開発しており、新たな症例の同定検索を進めている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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