研究課題/領域番号 |
22590526
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片岡 幹男 岡山大学, 大学院・保健学研究科, 教授 (50177391)
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研究分担者 |
柴倉 美砂子 岡山大学, 大学院・保健学研究科, 准教授 (30314694)
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キーワード | 呼気凝縮液 / 気管支喘息 / 免疫クロマト法 |
研究概要 |
呼気凝縮液(EBC)を用いて、好酸球性炎症と好中球性炎症を判別できるマーカーを見いだし、Point of care testing (POCT)に応用可能な迅速診断法を確立する。迅速診断法として免疫クロマト法を用いて、短時間で判別できるデバイスを開発する。これを用いて気管支喘息患者、とりわけ重症難治性患者の気道炎症状態をベッドサイドで把握し、喘息患者の治療、管理に応用可能なシステムを構築することを考えた。 1.呼気凝縮液中の好酸球性マーカーと好中球性マーカーの検出と定量 好酸球性マーカーとして好酸球カチオン蛋白(ECP)の検討を行い、ELISA法により測定可能であった。そこで気管支喘息患者44名(男性29名、女性17名)と健常者41名(男性1名、女性40名)より採取したEBC中のECPと好中球性マーカーとして骨髄性ペルオキシダーゼ(MPO)の測定を行なった。EBC中ECP濃度は、健常者で0.02±0.02ng/ml、喘息患者で0.33±0.08ng/mlと、喘息患者は健常者に比し有意に高値を示していた(p<0.01)。喘息患者の重症度別に比較すると、重症難治性群が最も高値を示す傾向にあった。喘息患者においてEBC中ECP値は末梢血好酸球数と有意の正の相関が認められた(r=0.65、p<0.05)。また1秒量(r=-0.5、p<0.01)、ピークフロー値(r=-0.47、p<0.02)と有意の負の相関が認められた。EBC中MPO活性は健常者では9.9±2.5mU/ml、喘息患者では27.9±3.8mU/mlと、喘息患者で有意の高値が認められた(p<0.01)。重症度別では、重症度が増す毎に、MPO活性が増加する傾向にあった。ECPとMPOが同時に測定できた喘息患者の両者の関連を見るとr=0.438、p<0.02と有意の負の相関が認められ、更に好酸球性気道炎症群(ECP高値、MPO低値)と好中球性気道炎症群(ECP低値、MPO高値)の2群に大別されることが判明した。 2.気道炎症判別デバイスの作製と測定 好酸球マーカーとして主要塩基性蛋白(MBP)と好中球マーカーとしてMPOを用いて免疫クロマトを作成した。 (1)抗体の調整 好酸球マーカーとして主要塩基性蛋白(MBP)と好中球マーカーとしてMPOを金コロイドにより標識した。捕捉抗体として用いる抗原特異的第二抗体を選択、調整した。 (2)免疫クロマトメンブレンの作製 ニトロセルロースメンブレンに捕捉抗体を塗布して免疫クロマトメンブレンを作製する。コントロールラインには第1抗体に対する抗免疫グロブリン抗体を塗布する。 (3)メンブレン選択、抗体の種類(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)や濃度、調整バッファー、ブロッキング液の選択等を行った。 (4)展開液中のマーカーの濃度に比例して、メンブレンの呈色がみられた。呈色の程度は目視とイムノリーダーにより測定し比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼気凝縮液中に気道炎症を判別するための好酸球性マーカーと好中球性マーカーが存在し、ELISA法による測定で、喘息患者が2群大別出来ることが判明した。また作成した免疫クロマトデバイスにより、呼気凝縮液も測定可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により好酸球性マーカーとしてMBPとECPの検討を行い、ECPの方が鋭敏であったが、ECPに対する抗体が入手できず、免疫クロマトにはMBPを用いることにした。好中球マーカーは更に探索する予定である。展開メンブレンへの捕捉抗体の塗布は用手的に行っているが、ラインが太くなり、将来的には専用プリンターが必要と考えられる。
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