本邦における未分化型胃癌の高危険群を絞り込むため、主として血清学的胃炎マーカーを用いて、高リスク群設定をおこなった。その結果、Helicobacter pylori血清抗体陽性、ペプシノゲン法陰性、ペプシノゲンII値高値(>30ng/ml)以上の集団において、未分化型早期胃癌の発生危険度が最も高値となり、高危険度群として特定可能であった。 現在、本邦においてABCリスク診断を用いた胃癌検診が行なわれつつあるが、これらの集団はB群に分類され、ともすれば中等度リスク(C群、D群に比べ比較的低リスク)と見なされてしまう可能性がある。本邦における胃癌死亡を減少させるためには、むしろこれらの集団に対して重点的な管理、介入が行なわれるべきである。本成績を今後の胃癌検診、診療に還元、応用していくことが必要である。 なお、我々が独自に開発したHelicobacter pylori CagA oligopeptideを抗原に用いた抗体測定系においては、結果の再現性などに問題があり、測定系の再構築を含めた改善策を検討中である。本血清マーカーも胃癌リスクを同定するにあたって、将来的に有用なマーカーとなる可能性があり、引き続き検討を継続する予定である。
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