1.動脈硬化巣にDNA二重鎖切断が存在することを証明した。 培養血管細胞を用いた研究により、酸化ストレスは、ゲノムに、最も致命的な二重鎖切断を生じさせ、修復系のシグナルを活性化し、p21などの細胞分裂抑制因子の誘導、つまり老化の形質をも誘導することを見いだした。また、ヒト動脈硬化病変部の免疫染色により、動脈硬化巣にDNA二重鎖切断の存在を証明した。 2.動脈硬化巣におけるゲノム損傷修復酵素の発現増加を証明した。 非相同末端結合(NHEJ)は生体内の細胞のDNA損傷修復において主役を演じていると言われている。我々は、そのNHEJの中心となる分子、DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の動脈硬化巣への集積を証明した。またp53の動脈硬化巣への集積も認めた。 3.動脈硬化マウスのゲノム修復機構の阻害により動脈硬化が増悪することを証明した。 ApoE欠損マウス(動脈硬化マウス)にゲノム修復因子であるAtaxia Telangiectasia-mutated(ATM)の阻害剤・カフェインを投与すると、動脈硬化に増悪が認められた。 4.遺伝子改変マウスを用い、ゲノム損傷修復異常と動脈硬化発症の関連を解明中である。 ApoEノックアウト(動脈硬化)マウスとゲノム損傷に対する修復異常を示すKu80 (DNA-PKと共同して修復を行う)ノックアウトマウスを交配した二重変異マウスを作成し、動脈硬化巣の進行度を比較検討した。現在のところ、仮説に反し、二重変異マウスで動脈硬化巣の縮小を認めた。その機序に関し、現在解析中である。
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