研究概要 |
長崎大学病院で2002年から2005年に手術が施行された病理病期がstageIA,IBの原発性肺癌241例を対象とした。そのうち肺腺癌は181例であった。その中で肺葉切除の対象となった145例の病理型を検討した結果、54例が組織学的な多型を有する混合型腺癌(mixed type adenocarcinoma)と診断された。54例中10例を、85歳以上、アスベスト-シス合併、未分化領域が存在するなどの理由で除外した。44例を対象として解析を行ったが、44例中6例から十分量のDNAを抽出することができなかったために、最終的に38例を解析対象とした。 38例に関して、パラフィン包埋標本で異なる病理亜型(BAC, Papillary, Acinar)が存在する部位を顕微鏡的に確認し、その部位に沿ってマイクロダイセクションを行った。病理亜型毎の検体より別々にDNAを抽出し、EGF受容体遺伝子変異解析を行った。38例中19例にEGF受容体遺伝子変異を認めた。遺伝子変異の検出について患者背景別に関連解析を行ったが、年齢、性別、病期、喫煙歴で相関のあるものは認めなかった。次に、腫瘍内におけるEGF受容体遺伝子変異のheterogeneityについて解析を行った。その結果、9例において腫瘍内におけるEGF受容体遺伝子変異の体遺伝子のheterogeneityが見つかった。遺伝子変異はPapillaryやAcinarと比較してBACにやや多く認められたが、統計学的な有意差は無かった。一方で腫瘍内のheterogeneityは喫煙歴を有する症例に有意に多く認められた(P=0.043)。Progression-free survival, Overall survivalとEGF遺伝子変異陽性および変異のheterogeneityとの統計学的な相関は認めなかった。
|