研究課題
【背景】高比重リポ蛋白(HDL)には、ApoE-rich HDLとApoE-poor HDLが存在する。HDL-Cホモジニアス法では、ApoE-rich HDLに対する反応性の試薬間差が存在し、HDL-C測定法の標準化は進んでいない。また、ApoE-richHDLを含むHDL亜分画の長期保存の安定性についての検討は少なく、ApoE-rich HDLを精密に解析する方法も確立されていない。HDL-C測定法の標準化のために、ApoE-rich HDLの血中での特性と臨床的意義を明らかにする必要がある。【目的】ApoE-richHDL亜分画の分布と長期保存での安定性を明らかにする。【方法】12時間以上絶食後の正脂血症から、EDTA採血により新鮮血漿を採取した。血漿は0℃で保存し、検体の一部は4℃および-80℃で保存した。保存時間の影響は、0日,2日,7日,43日後に測定して比較した。ApoE-rich HDL亜分画の分布は、非変性二次元電気泳動(一次元目,0.75%アガロースゲル;二次元目,2-15%濃度勾配ポリアクリルアミドゲル)で解析した。HDL亜分画は、NC膜に転写し、抗ApoE抗体と^<125>Iでラベルした二次抗体でApoE-rich HDL亜分画をWB法で検出した。【結果】正脂血症では、ApoE-richHDLは、粒子サイズの大きい分画と小さい分画の複数が存在した。0℃保存後、保存時間の経過ともに小粒子分画がやや増加した。4℃および-80℃保存では、保存時間の経過とともに小粒子分画が増加した。一方、大粒子分画は、0℃保存では比較的安定であったが、4℃および-80℃保存においては保存時間経過とともにやや減少した。【結論】ApoE-rich HDLは、大粒子分画のみならず、小粒子分画も存在する。小粒子のApoE-rich HDLは、0℃では比較的安定だが、4℃および-80℃保存では、長期保存の場合にLCATによる粒子の成熟は影響を受け、HDL亜分画の組成は変動する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
ApoE-rich HDLの血中での特性を明らかにするために非変性二次元電気泳動を用いた基礎的検討を完了した。正脂血症および脂質異常症でのApoE-rich HDL亜分画の分布と保存安定性についての基礎的データを確認することができた。
HDL-Cの4つの測定法(CDC法:Heparin-Mn^<2+>、DCM法:Dextran sulfate-Mg^<2+>、13%PEG法、リンタングステン酸Na法)で得た上清と沈殿物中のApoE-rich HDL亜分画を非変性二次元電気泳動で検討する。また、各種HDL-Cホモジニアス法とApoE-rich HDL亜分画の関係、各種疾患におけるApoE-rich HDL亜分画の変動を明らかにする。研究が計画通りに進まない時は、HDL代謝に関わるLCAT,CETP,PLTPなどの脂質関連酵素をELISA法で測定し、ApoE-rich HDL亜分画との関係を検討する。
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