本研究は、腫瘍マーカとしての新規テロメラーゼ分析法の開発を主とし、さらにその方法を用いてのiPS細胞の判定ならびに創薬的制癌剤スクリーニング法への適用を目的とする。本分析法は、腫瘍細胞由来のテロメラーゼ活性をテロメア修復反応で生じるピロリン酸に着目し、これをピルビン酸ホスフェートジキナーゼ(PPDK)によりATPに変換、次にホタルルシフェラーゼ生物発光により検出することを原理とする。この方法は、従来法で用いる電気泳動や蛍光検出の操作は無く、迅速で簡便にテロメラーゼ活性が測定可能である。生物発光は、アイソトープに相当する感度が得られ、また蛍光法と違い励起光としての光源を必要しないため、高感度でしかも測定機器を超小型(ハンデイータイプ)にすることも可能である。これにより臨床現場でのオンサイト診断法としても適用可能である。本研究は、がんの臨床化学ならびに再生医療などの基礎研究において有用な分析法として利用されるものと考える。本年度は、以下の項目について検討した。 (1)長時間発光型のピロリン酸生物発光法の開発 すでに開発したピロリン酸生物発光法は、SNP s測定用に開発したため、発光は30秒以内で終了するよう設定した。本研究では、酵素サイクリングを利用した長時間発光型の測定法を開発する。その原理は、PPDKによりピロリン酸からATPに変換、次にルシフェラーゼ反応により発光と同時にAMPとピロリン酸が生成し、再度ピロリン酸が発光に利用される原理に基づく。研究では、エンザイムサイクリングでの諸条件について検討した。(2)腫瘍細胞を用いてテロメラーゼ活性の測定に本発光を適用した。また感度不足によりテロメラーゼのPCR法について検討した。
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